『がん』といえば、これまで手術、抗がん剤、放射線、免疫治療薬による治療が行われてきましたが、新たな治療法「第5のがん治療」と言われる「光免疫療法」が先月、世界に先駆けて、日本で実用化されることになりました。
この治療法の特徴は、特殊な化学物質をがん細胞に集積させて、その物質に光を当てることでがん細胞だけを壊死させる、まったく新しい治療法とのこと。

出典:NHK

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この治療法を発明したのは、なんと日本人の方なんです!
アメリカの国立衛生研究所に所属する小林久隆さんという研究者の方です。
そして、この新たな治療法『光免疫療法』の薬が、頭けい部がんの治療薬として承認されたのは世界で初めてとのこと。
承認されたのは、製薬会社「楽天メディカル」が開発した「セツキシマブ サロタロカンナトリウム」、商品名「アキャルックス」。
この治療薬は、がんを狙い撃ちにする抗体を使った薬に、光に反応する化学物質を組み合わせた新しいタイプのがんの薬です。
薬は、がん患者に点滴で投与すると、がん細胞に結び付き、その後、体の外から近赤外線のレーザー光を当てると薬が活性化され、がん細胞が破壊される仕組みだということで、国内やアメリカで行われた治験で安全性や一定の有効性が確認されたということです。
投与の対象となるのは、手術で取り除くことが不可能な「頭けい部がん」の患者などで、薬を投与したあと20時間から28時間後にレーザー光を照射して治療するとしています。
レーザー光を照射する装置「バイオブレードレーザシステム」も9月2日、厚生労働省から医療機器として承認されており、今後は医療機関で受けられるよう、医療保険を適用する手続きが進められる見込みです。
『光免疫療法』の発明者である小林久隆さんによれば、
「がん腫瘍はがん細胞とがんを助ける細胞(悪玉)と、がんと闘う細胞(善玉)のミックスチャー。既存の三大治療法(手術、抗がん剤、放射線)はその一切合切を取り除くやり方で、がんと闘う細胞まで痛めつけてしまう。『光免疫療法』は体の毒にならない化学物質を使って、がん細胞だけを狙い撃ちにする。攻撃と防御を両方行える治療法だ」
狙撃手のように、悪玉細胞だけをやっつけるのがミソで、善玉細胞を残すので患者の体への負担が少なく、治療後のQOL(生活の質)が低下しにくいそうです。
まったく新しいがん治療が日本で始まるのは朗報ではありますが、実は、今回治療の対象になるのは再発頭頸部がんのみなんです。
従来のがん治療とは手法が異なるため、専用の機器やトレーニングを受けた医師が必要だったり、インフラ整備には時間がかかると見られています。
また、今回承認された治療薬「アキャルックス」は、頭頸部がんにのみ効果を発揮するということで、他の部位でも効果がある薬の開発が次の課題だそうです。
「アキャルックス」に続く第二、第三の薬剤を開発するには、さらに膨大な研究開発費が必要になりますが、ここは2020年「日本長者番付」で6位(推定資産54億ドル=約5700億円)にランクされる楽天の社長である三木谷さんの力で一日も早い開発を期待したいところですね。